小児の股関節の痛み

 股関節は両側の足の付け根にある、人間の体の中で一番大きな関節です。関節痛の痛みの原因はさまざまですが、小児の股関節の痛みは、その特殊な構造のため、成人の股関節には見られない特徴的な病気が原因となることが多くあります。代表的な病気は以下のとおりです。

1.単純性股関節炎(3~8歳ごろに多い)

 特に何をしたわけでもないのに足の付け根から膝(ひざ)あたりまでの痛みがあり、痛みは歩ける程度のものから歩行困難なものまでさまざまです。はっきりした原因は不明ですが、風邪などの後に発症することもあります。2~3週間の安静で良くなります。

2.化膿性股関節炎(いずれの年齢にもあり、乳幼児にも多い)

 主に黄色ブドウ球菌という細菌感染が原因となる股関節の炎症です。発熱・食欲不振・不機嫌・下痢などの全身症状を伴うものが多く、乳児の場合、片足を動かさない、おむつ交換の時に大泣きするなどで病気が見つかることがよくあります。
 また、発熱など、かぜ症状と似ているため注意が必要です。処置をしないと関節が壊れ障害を生じるため早期発見・早期治療が重要です。治療は、通常手術が必要となります。

3.大腿骨頭(だいたいこっとう)すべり症(10~15歳ごろに多い)

 大腿骨の最も足の付け根側にある部分(骨頭)の一部がずれる(すべる)状態で、明らかな外傷を伴う急性型と、外傷がなく徐々に発症する慢性型があります。肥満傾向の男児に多い事が特徴です。治療は手術が必要となります。

4.ベルデス病(3~12歳、特に4~8歳ごろに多い)

 成長期に大腿骨の骨端部(骨端核)の血流が障害され変形や成長障害が起こる病気です。痛みが股関節だけでなく大腿部や膝まで及ぶ場合や、痛みは軽度でも歩行の異常が発見されることもあります。男児に多く見られる病気です。治療は年齢、変形の程度、病期によっても異なりますが、装具療法や手術療法などがあります。
 小児の股関節疾患は股関節の痛みだけでなく、大腿部前面や膝に痛みを生じる事も多く、また成長痛と思われて診断や治療の開始が遅くなることがしばしばみられます。痛みが軽度の場合でも、症状が長く続いたり、歩行がおかしいような場合は早めに医療機関に相談するようにしましょう。