西ナイル熱・西ナイル脳炎

西ナイルウイルス(ウエストナイルウイルス)とは

西ナイル熱・西ナイル脳炎は蚊を介して人、鳥、ウマに伝播(でんぱ)するウイルス感染症で、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス属の西ナイルウイルスによって引き起こされます。流行には渡り鳥の存在や感染蚊の移動が関係していると考えられています。温帯地域において、多くは夏から初秋にかけて発生します。

ウイルスはアフリカ、中近東、西アジアに分布しており、ヨーロッパでは1990年代中ごろから流行が認められ、北米では1999年に東海岸より流行が始まり、2002年は12月31日までに全米40州で3873人が発症し、脳炎で246人が亡くなっています。

日本での発生は現在のところ認められていませんが、輸入感染症として注意が必要です。

西ナイルウイルス感染症とその症状

人における潜伏期間は3~15日で、通常80%は不顕性感染(無症状)で、発症しても多くは39度以上の突然の発熱(98%)、食欲不振などの消化器症状(80%)、頭痛(53%)、胸や背中や上肢の発疹(50%)、筋肉痛などの症状が見られ、約1週間で回復します。感染者の約1%が脳炎になり、激しい頭痛、高熱と方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、けいれんなどの症状を認め、重篤(じゅうとく)化します。

しかし北米の流行では従来のタイプと異なり、感染鳥の発病や死亡率が高く、症状は頭痛を伴う発熱が9%にすぎず、筋力低下を伴う脳炎が40%、脳炎が 27%、無菌性髄膜炎が24%に見られ、脳炎や筋力低下を認める人が多いのが特徴です。また脳炎発症の約10%の人が亡くなっています。

診断と治療および予防

経過や症状より本疾患が疑われたら、血液や髄液を用いウイルス遺伝子(RNA)の検出や抗体の測定を行い診断します。治療は一般的に対症療法を行います。現時点ではワクチンはありません。

流行地域から渡航された方は、高熱やけいれん、意識障害など重篤な症状がなくても、発熱・頭痛・筋力低下・発疹など認める場合は本症の可能性もありますので、医療機関への受診および成田空港検疫所健康相談室へお申し出ください。初期の段階でウイルス検査を迅速に行うことが、感染の広がりを最小限に抑えることになるのです。

また国内での発生を認めたときは、虫除け剤の塗布や網戸の使用など蚊に刺されないようにする工夫と、蚊の発生を減らすため水溜りを減らすなど心がけてください。