現代社会で働く人のうつ病対策

 昨今の働く人々を取り巻く環境は、社会的にも心理的にも実に厳しい状況におかれているので、心の健康が不調、不全に陥りやすいといえます。

 企業の現場で特に対応が迫られているのはうつ病です。その患者数の増加、罹患(りかん)による生産力の低下、事故、欠勤と問題が山積みしています。そこでもう一度自己診断法で「うつ病」を診断してみましょう。

① 一般的に不定愁訴と言われることの多い、さまざまな身体症状が出る
② 精神的な乱れを示す異常や症状が出る
③ 異常や症状には日内変動がある
④ 症状が複数であることが多い
⑤ 性格的に、うつ病になりやすいタイプである
⑥ 異常や症状が出た際に、なにかきっかけとなる「できごと」がある
⑦ 逆に、昇進、家の新築などの「幸せなできごと」があり、それが心理的な負担になっている
⑧ 気分の落ち込みを季節的に繰り返す

 このような条件にあてはまる率が高いほど、うつ病が疑われるケースは濃くなると考えられます。眠れていない、元気がない、顔色がさえない、口数が少なくなった、朝何をするのも億劫だ、帰宅後疲れがひどい、休日も疲れているようでゴロゴロしている、食欲がなくやせてきた、性欲も落ちた、悲観的なことを言う、話しかけても生返事しかしない、このような態度の多くは、何か心身に異常が生じているのではないかと思わせるものです。自分の精神状態がいまどのような状態にあるのか、それを客観的にとらえることは口で言うほど容易なことではありません。

 そこで医師たちは、これまで精神状態を分析する手がかりとして、問診だけではなく、さまざまな方法によって、受診者の心の状態を調べる工夫を考案してきました。その一つにSRQ-Dといって質問事項をチェックすることで自分の抑うつ尺度を自己判断するスクリーニングテストも開発されています。

 この抑うつ自己評価尺度については次回の心身医学シリーズでお話をします。