つらい肩の痛み

 肩の関節は「腕を上げる」「肩を回す」など全身の関節の中で最も大きな動きをします。
 肩関節の周囲には関節を支える靭帯、筋肉、関節包(関節を覆う袋)などの組織があり、普段からこれらの組織には大きな負担がかかり、肩の痛みが起こります。痛みの原因として主に以下のものが挙げられます。

五十肩(肩関節周囲炎)

 40歳から60歳までの肩の痛みの原因で最も多いのは五十肩です。肩関節の周囲の組織に炎症がおこるため「肩関節周囲炎」ともよばれています。特別な原因がなく肩の痛みや肩が動かしにくいといった症状で始まります。「急性期」「慢性期」「回復期」という経過をたどり多くは軽快しますが、それぞれの時期にあった適切な対処を行うことで痛みは軽くなり、早く治る事も可能となります。
 急性期は痛みが始まって約1~2カ月程ですが、肩を動かしたときはもちろん、安静時にも強い痛みが続きます。この時期に大切な事は無理に動かさず、できるだけ安静を保つことです。痛みの強い場合は消炎鎮痛薬(内服、外用)やステロイドの注射を行い炎症を抑えます。
 慢性期になると痛みは軽快しますが肩の動かしにくさが残り、「関節が硬くなった」状態で4~6カ月間家事や仕事などの日常生活に支障をきたします。この時期には関節をよく動かすための運動療法が主体になります。状態により消炎鎮痛薬やヒアルロン酸注射などを併用します。
 回復期に入ると痛みや硬さは徐々になくなり肩が動かしやすくなります。より積極的な運動療法や筋肉トレーニングが行われます。

肩腱板断裂

 長年肩を動かしているため肩関節を囲む腱に負担がかかり擦り切れてしまって肩の痛みが起こります。転倒や打撲が原因になることもあります。症状が五十肩に似ているため、よく五十肩として治療が開始されることもあります。痛みが長く続く点は五十肩に似ていますが、肩の動きが比較的良いこと、ある一定の角度での痛みが強いことなどで五十肩と区別することができます。
 診断は痛みの経過、肩の診療、レントゲン検査に加えて、さらに確実に診断し適切な治療法を選択するためにMRI検査が行われます。治療は症状の強さ、損傷の程度だけでなく、年齢、職業、スポーツなども考慮して選択されます。理学療法や消炎鎮痛薬、注射などの保存的治療で効果が見られない場合は手術も積極的におこなわれ良好な効果が得られます。五十肩と違って自然に治ることはなく、放っておくと症状が悪化するため、肩の痛みがなかなか良くならない時や、悪化する場合は肩腱板断裂の可能性を考え早めにかかりつけ医、整形外科にご相談ください。