おねしょと夜尿症
眠っている間の尿のおもらしのことを「おねしょ」とか「夜尿」といいます。「おねしょ」が乳幼児期の一般的な行為を示すのに対し、5~6歳になっても月に数回眠っている間におもらしがあることを「夜尿症」といいます。
全国の5~15歳の子どものうち、約80万人(約6.4%)が夜尿症といわれています。
夜尿症の原因
- (1)眠っている間にできる尿の量が多すぎて膀胱からあふれてしまう場合、
- (2)眠っている間に膀胱にためられる尿量が少なく、多くない尿でもあふれてしまう場合、
- (3)眠っている間の尿量が多くて膀胱のためられる量も少ない場合
- があります。
ただ、(1)(2)(3)だけでは夜尿症にはなりません、おしっこが多くても膀胱の容量が少なくても、尿意を感じたときに目を覚ましてトイレに行けば夜尿症にはなりませんので、いずれの場合もおしっこがあふれそうになっても目が覚めないことが共通してあります。
また、稀ではありますが腎臓や脳・脊髄などの病気が夜尿症の原因になっている場合もあります。半年以上夜尿がなかったのに再びするようになった場合や、年長さんの学年(小学校入学の前の年)になっても日中目が覚めているときにおもらしがある場合は早めに医療機関を受診するのが良いと思います。
「おねしょは自然になおる」?
夜尿症の自然治癒率(放っておいても自然に治る率)は年間10~15%位と言われています。治療をうけることで治癒率は、1年で約50%、2年で約70%、3年で約80%以上に上昇します。また、小学校入学時に夜尿があれば、約1/2の確率で小学校高学年になっても夜尿が残るともいわれています。夜尿症が長引くことでこどもの自尊心が低下することが心配です。
小学校入学時に毎晩のように夜尿がある子は医療機関受診をするのが良いと思います。
基本は、生活の改善
まず、大原則は「起こさない」「焦らず(他の子と)比べない」「怒らずほめる」です。
生活改善の具体的なことは以下のようになります。
(1)できるだけ規則正しい生活をする。
夜更かしや不規則な生活は夜尿を悪化させます。夜の尿量をへらす抗利尿ホルモンは夜11時くらいの深い睡眠中にたくさんでることがわかっています。
(2)1日の中で水分のとり方を変える。
夕食から寝るまでの3時間くらいの水分を減らすことが大切です。その代わり、朝から夕方まではたっぷり水分をとります。
(3)塩分を控える。
塩分が多いとのどがかわき、水分のとりすぎにつながります。
(4)寝ているときの寒さや冷えからからだを守る。
寒い季節にはお風呂に入ったり、布団をあらかじめ暖めておくなどがよいでしょう。
(5)寝る前にトイレに行く。
寝る前にトイレにいって膀胱を空にしておくことが大切です。
(6)便秘があればなおす。
便秘を直すと夜尿か改善する場合もあります。
医療機関での治療
日本夜尿症学会の夜尿症診療ガイドラインが新しく、診療ガイドライン2016になりました。
2週間から1か月くらい生活の改善をして、それでも治らない場合は以下の2つの治療のどちらかを開始します。
(1)薬物療法
元に使われるのは抗利尿ホルモン薬が多いです。寝る前に服用することで尿を濃くして量を減らす働きがあります。最近は水なしで飲める薬が主に使われます。
(2)アラーム療法
寝る前にお子さんのパンツに小さなセンサーをつけることで、尿でパンツが濡れるとアラームが鳴る条件づけ訓練法です。夜尿後すぐにアラームで知らせて本人に認識させ、それを繰り返すことにより夜間にためられる尿量が増えて、夜尿量の減少、夜尿回数の減少につながり、治ると考えられています。
夜尿は熱が出たり、咳や鼻、嘔吐下痢などの急性の症状でないため医療機関を受診されていない場合が多いです。「子どものおねしょに関する意識調査」(2015年)によると、こどもの夜尿に悩むお母さんのうち約80%が「医師に相談したことがない」と回答しています。
遠慮せずにかかりつけの小児科で御相談下さい。