■ あなたの健康(「広報まつど」のコラムより)

これからのうつ、およびうつ状態はどう対処すべきか

(2009年10月15日号より)

 わが国の心身医学会や心療内科におけるうつ病の取り扱いについては、これまで種々、意見の多いところです。わが国の初期の心身症研究を今、改めて見直してみると、かなりの部分が神経症やうつ病の身体症状部分の研究でした。

 その後、おそらくそれまでの反省もあって、1991年には心身医学の新しい診療指針として、神経症やうつ病は心身症に含まれないと定義されました。

 このように心身症が定義されたことなどからか、心療内科では、うつ病は扱うべきではない、と考える人がかなり多くなっています。しかし、最近では、DS M-Ⅳ(精神障害の診断と統計マニュアル第4版)の心身症コードである身体疾患に影響をおよぼす心理的因子の中で、うつ病・うつ状態は、重要な因子として位置づけられています。こうした歴史的な背景もあって、心療内科の領域でも身体症状を主体とする軽症うつ病診療には貢献して当然であるとする意見もあるのが現状です。

 1998年以来、わが国の年間自殺者の数は3万人を超え、その主な原因は、うつ病とされています。2006年10月時点で全国の医療機関を対象に行われた患者調査によりますと、2005年のうつ病を主とする気分障害の患者数は92万4,000人で、1999年の約2倍に増加しています。うつ病は早期に診断され、適切な治療が行われれば治る可能性の高い病気です。うつ病およびうつ状態では、睡眠欲・食欲・性欲・集団欲といった人間が生きていくうえでの基本となる本能が、それぞれいろいろな程度に損なわれ、その結果、人によってさまざまな精神症状や身体症状が現れてきます。

 2002年12月31日時点における日本の診療科別医師数をみると、総数24万9,574人、その内訳は、内科系10万360人(心療内科医635人)、精神科系1万2,218人です。現在100万人にものうつ病患者の診療には、精神科医だけでは不足しているのは明らかです。

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